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スタッドレス交換時期が早すぎるデメリット5選と最適時期

秋が深まり、近所のカー用品店やガソリンスタンドから「スタッドレスタイヤ早割キャンペーン!今なら工賃無料!」なんて案内がポストに入っていると、心が揺らぎますよね。

「どうせいつかは交換するんだし、本格的な冬が来て混雑する前に、しかも安く済ませられるなら…」

そう考えて、まだ日中はポカポカと暖かい10月や11月上旬に、つい予約を入れてしまいたくなる気持ち、本当によく分かります。

私自身、まだ雪国での運転に慣れていなかった頃、10月の気持ちいい秋晴れの中、「早割、今日まで!」の大きなノボリを見て、「今交換しないと損だ!」と本気で悩み、危うくピットインしそうになった経験がありますから。

しかし、その一方で、「まだこんなに暖かいのに交換したら、タイヤがすぐ減ってしまうのでは?」「雨の日に、なんだか滑りやすくなったり、燃費が悪くなったりしない?」という不安がよぎるのも、当然のことです。

実は、その直感はとても正しいのです。

スタッドレスタイヤへの早すぎる交換は、あなたが「お得」だと思っている金額を、あっという間に帳消しにしてしまうほど、「摩耗」「安全性」「コスト」の3つの面で、思っている以上に大きなデメリットを生む可能性があります。

この記事では、なぜスタッドレスの早期交換が推奨されないのか、その具体的な5つのデメリットを、これでもかというほど徹底的に解説します。

さらに、「どうしよう、この記事を読む前にもう交換しちゃったよ!」という方が今すぐ安心できるための具体的な対処法、そして「結局、いつ交換するのが一番賢いの?」という疑問に完璧にお答えする最適なタイミングについても、専門的な視点から、分かりやすく、丁寧にお話ししていきますね。

 

この記事のポイント

  • スタッドレスの早期交換は「タイヤ摩耗」「燃費」「走行安定性」で明確に損をする
  • 暖かい日の「ドライ路面」と「ウェット路面」での性能低下が最大の危険
  • タイヤの摩耗コストが「早割」の割引額を上回る可能性が高い
  • すでに交換した場合でも、焦って戻す必要はないが「急」のつく運転は厳禁
  • 最適な交換時期は「最低気温7℃」と「初雪の1ヶ月前」が鉄則

 

なぜダメ?スタッドレス交換が「早すぎる」と発生する5つのデメリット

では、早速本題です。なぜ「早すぎる」交換が良くないのでしょうか。

それは、スタッドレスタイヤが「マイナス20℃の氷の上でも、しっかり止まる」という、極めて特殊な性能を追求して作られているからです。そのため、夏タイヤとは「素材」も「設計思想」も、根本から全く異なります。

暖かい季節にスタッドレスタイヤを使うことは、例えるなら「雪山用のフカフカなスノーブーツで、真夏の炎天下のアスファルトを全力疾走する」ようなもの。

ブーツの柔らかいソールはあっという間に削れてボロボロになり、走りにくく、しかも雨が降ったらツルツル滑って危ないですよね。

これと全く同じことが、あなたの車とタイヤにも起こるのです。

「スタッドレス 交換時期 早すぎる デメリット」として、特に知っておいてほしい5つの点を、順に見ていきましょう。

 

デメリット1:乾いた路面で「タイヤが急速に摩耗」し寿命が縮む

 

これが、経済的にも、そして精神的にも(「あぁ、もったいない…」という…)最も大きなデメリットであり、皆さんが一番心配される点だと思います。

なぜ、そこまで急速に摩耗するのか?

答えは、その「柔らかさ」にあります。

スタッドレスタイヤのゴムは、氷点下の世界でもカチカチに硬くならず、しなやかさを保つことで、ツルツルの氷の表面に「ピタッ」と密着できるように、非常に柔らかい特殊なゴム(低温下でも柔軟性を失わないコンパウンド)で作られています。

最近のタイヤ、例えばブリヂストンの「ブリザック」などは、「発泡ゴム」といって、ゴム内部に無数のミクロの気泡を持たせることで、氷の上の水膜を吸い取りつつ、柔らかさを保つ工夫がされています。

しかし、この「氷点下で最適化された柔らかさ」が、暖かいアスファルトの上では致命的な弱点になります。

気温が15℃、20℃と高い日に乾いたアスファルト路面を走ると、その路面温度は直射日光で40℃、50℃に達することも珍しくありません。

そんな高温のアスファルトは、柔らかいスタッドレスのゴムにとって、まるで「熱した鉄板の上に置かれた、よく消える柔らかい消しゴム」と同じ状態。

走るたびに、本来なら貴重な雪や氷を掴むための柔らかいゴムが、みるみるうちに削り取られていってしまうのです。

具体的に、どれくらい寿命が縮むのか?

これは気温や走り方によって大きく異なりますが、大げさではなく「1ヶ月早い交換が、タイヤ寿命のワンシーズン分(20%〜25%)を奪ってしまう」可能性も十分にあります。

私の友人が一度、こんな失敗談を話してくれました。

彼は長野の山間部に住んでいるのですが、10月下旬の「早割最終日」に新品のスタッドレスに交換しました。その週末、たまたま東京で友人の結婚式があり、暖かい秋晴れの高速道路を片道200km以上、往復したそうです。

そして、長野に帰ってきた時のタイヤを見て、彼は愕然としました。

「たった1回の往復で、新品だったはずのタイヤの角が、明らかに丸くなって、うっすらと“ヒゲ”まで出ていたんだ…」と。

冬本番の雪道を5,000km走るのと同じくらいの摩耗が、たった1〜2日間の「暖かい長距離ドライブ」で発生してしまったのです。

これでは、4シーズン使えるはずだったタイヤが、3シーズンで交換…なんてことになりかねません。

 

デメリット2:雨の日の「ブレーキ性能が低下」し滑りやすい

「雪に強いんだから、雨にも強いんじゃないの?」

これは、スタッドレスタイヤに関する「最も危険な誤解」の一つです。はっきり言いますが、暖かい時期の雨の路面では、スタッドレスタイヤは夏タイヤより明らかに滑りやすいです。

なぜ、雨で滑るのか?

タイヤの「溝」の役割を想像してみてください。

夏タイヤ(特に、雨天性能を重視したタイヤ)の溝は、進行方向に対して「太く、まっすぐな排水路」がしっかり確保されています。これは、タイヤが踏んだ大量の雨水を、一瞬でタイヤの後方や側面に排出するためです。

一方、スタッドレスタイヤの溝を見てみてください。

太い溝もありますが、それ以上に、髪の毛のように細かな溝(これは「サイプ」と呼ばれます)が無数に刻まれているはずです。

この「サイプ」は、雪を掴んで固めたり(雪柱せん断)、氷の上のミクロの水膜を吸い取ったりするためのもので、「大量の雨水を一気に排出する」能力は、ほとんどありません。

例えるなら、夏タイヤの溝は「バケツ」で水をかき出すようなもの。

スタッドレスのサイプは「スポイト」で水を吸い取るようなものです。

土砂降りの雨の中、スポイトで水をかき出そうとしても、間に合わないのは明らかですよね。

結果として、タイヤと路面の間に水の膜ができてしまう「ハイドロプレーニング(アクアプレーニング)現象」が、夏タイヤよりもずっと低い速度(時速60km〜70km程度でも)で発生しやすくなります。

特に危険なシーン

私自身、まだ11月上旬の、気温15℃くらいの「生暖かい雨の日」に、スタッドレスを履いた車でバイパスを走っていて、前の車が減速したのに合わせてブレーキを踏んだら、「ズズズッ…!」とABSが作動して、思ったより車が止まらず、ヒヤッとした苦い経験があります。

「雪道より、秋の雨道のほうがよっぽど怖いじゃないか…」と、本気で背筋が寒くなりました。

特に注意したいのが、「暖かい日の、走り始めの雨」です。路面のホコリや油分が雨と混じり、非常に滑りやすいフィルム状になります。そんな最悪のコンディションで、排水性能の低いスタッドレスタイヤを履いている……。考えただけでも恐ろしい状況です。

 

デメリット3:「走行安定性が悪化」し運転しにくい(ふにゃふにゃ感)

 

交換してすぐに、多くの人が「あれ?」と感じるのが、この独特の違和感かもしれません。

なぜ「ふにゃふにゃ」するのか?

原因は、やはりその「柔らかさ」です。

デメリット1で説明した「ゴム自体の柔らかさ」に加えて、デメリット2で説明した「無数のサイプ(細かな溝)」が原因となります。

サイプが多いということは、タイヤの接地面が「一枚の大きなゴム」ではなく、「細かく分割されたブロックの集合体」になっているということです。

一つ一つのブロックが小さく、しかも柔らかいゴムでできているため、コーナリングや急ブレーキで横や縦の力がかかると、そのブロックが「グニャッ」と簡単に変形(ヨレ)してしまうのです。

具体的な影響

これは、まるで「底の厚いフカフカなスニーカーで、急に反復横跳びをする」ような感覚に似ています。グニャッとした感触がワンテンポ遅れてから、体が動きますよね。

車で言えば、

  • 高速道路でのレーンチェンジ
  • バイパスの合流
  • 少し速度を出したままカーブに進入した時

こうした場面で、ハンドルを切っても車がワンテンポ遅れて反応するような「ふにゃふにゃ感」「ぐらつき」として現れます。

私自身、初めて暖かい時期にスタッドレスを履いた時、高速道路のインターチェンジの、ぐるっと回るカーブ(ランプ)で、いつもと同じ速度で曲がったら、車体が外側に「ぐにゃ〜っ」と膨らむような感覚に襲われました。

「え、もしかしてパンクした?」

本気でそう思い、思わず強くブレーキを踏みそうになるほど、不安定に感じました。(もちろん、そこで急ブレーキを踏んだら、余計に危険だったでしょう)

この不安定さは、運転していて気持ちが悪いだけでなく、とっさの危険回避(障害物をよけるなど)の操作を遅らせる原因にもなりますし、何より長距離運転での精神的な疲労に直結します。

 

デメリット4:「燃費が悪化」し、ガソリン代が余計にかかる

「タイヤで燃費が変わるなんて、大げさな」と思うかもしれませんが、これは非常に大きな経済的デメリットです。

なぜ燃費が悪化するのか?

ここでも原因は「柔らかさ」です。

柔らかいタイヤは、路面に接する時に大きく変形します。車が前に進むためには、変形したタイヤを「よいしょ」と転がして、元の形に戻すエネルギーが必要になります。

この「転がる時に失われるエネルギー」のことを「転がり抵抗」と呼びます。

「空気の抜けた、ふにゃふにゃの自転車」を漕ぐ時、ペダルがものすごく重く、体力を消耗しますよね?あれと全く同じ原理です。

スタッドレスタイヤは夏タイヤ(特に「低燃費タイヤ」)よりも柔らかいため、「転がり抵抗」が格段に大きいのです。

エンジンは、その余計な抵抗に打ち勝って車を進ませるために、夏タイヤの時よりも多くのエネルギー(=ガソリン)を消費してしまいます。

目安はどれくらい?

一般的に、最新の低燃費タイヤと比較して、スタッドレスタイヤは5%〜15%程度、燃費が悪化すると言われています。(※車種やタイヤの銘柄によります)

仮に10%悪化するとしましょう。

普段リッター15km走る車なら、スタッドレスだとリッター13.5kmに落ちる計算です。

もし、あなたが1ヶ月早く交換してしまい、雪が降るまでの間に1,000km走ったとします。

ガソリン代が1L=170円だと仮定して、計算してみましょう。

  • 夏タイヤの場合: 1,000km ÷ 15km/L = 約66.7L66.7L × 170円 = 11,339円
  • スタッドレスの場合: 1,000km ÷ 13.5km/L = 約74.1L74.1L × 170円 = 12,597円

その差は、なんと「1,258円」。

これはたった1ヶ月、1,000km走っただけの計算です。

もし2ヶ月早く交換し、通勤などで2,000km走ってしまったら…?

せっかく「早割」で浮かせたはずの2,000円〜3,000円が、ガソリン代として、静かに消えていくのがお分かりいただけると思います。

 

デメリット5:【結論】「早割」の割引額以上に「コスト」で損をする

 

ここまでを総合すると、結論は非常にシンプルです。

「早割」であなたが節約できる金額は、いくらでしょうか?

おそらく、交換工賃の2,000円〜3,000円、運が良ければタイヤ代の5%オフ(数千円)といったところでしょう。

では、失うものの価値はどうでしょう?

デメリット1(摩耗)とデメリット4(燃費)を足し合わせてみましょう。

  • 失うもの①(タイヤ摩耗):例えば、10万円のスタッドレスタイヤセットが、4シーズン(4年)使えるとします。もし、10月や11月の「早すぎる交換」によって、その寿命が20%縮んだとしたら?10万円の20%……つまり、2万円分の価値を、たった1〜2ヶ月のフライングで失ってしまったことになります。
  • 失うもの②(燃費悪化):先ほどの計算のように、1ヶ月〜2ヶ月で1,000円〜2,000円のガソリン代を余計に支払うことになります。

【コストの比較】

  • 早割で得たもの: 3,000円の割引
  • 早割で失ったもの: 20,000円(タイヤ寿命) + 2,000円(ガソリン代) = 合計 22,000円の損失

これは、「3,000円引きのセールで、2万5千円の高級セーターを買ったつもりが、たった1回の洗濯で縮んで、もう着られなくなってしまった」ようなものです。

もちろん、これはあくまで一例であり、全員がこうなるわけではありません。

しかし、特に雪の少ない地域にお住まいの方が、10月や11月上旬に交換してしまうと、この計算に近い損失が発生する可能性は非常に高いのです。

「早割」は、あくまで「もうすぐ確実に寒くなる雪国」の住民が、「混雑のピークを避けるため」に利用するものであり、暖かい地域の人が「お得だから」という理由だけで飛びつくのは、賢明な判断とは言えないかもしれません。

 

【緊急Q&A】もうスタッドレスに交換してしまった人の不安解消

さて、ここまで読んで、「どうしよう…もう交換しちゃったよ!」「最悪だ、損した…」と、青ざめている方もいらっしゃるかもしれません。

大丈夫です、どうか慌てないでください。

今からすべてが台無しになるわけではありませんし、絶望する必要も全くありません。

大切なのは、事実を知った「今この瞬間」から、どう行動を変えるか、です。

ここからは、すでに交換を終えてしまった方が、今すぐできる「不安解消法」と「タイヤを守るための具体的な対策」を、丁寧にお伝えしますね。

 

Q1. まだ暖かいのに交換済み…一度夏タイヤに戻すべき?

 

結論から言えば、「その必要は、まずありません」。

私の個人的な見解としても、一度交換したものを、わざわざもう一度夏タイヤに戻すのは、強くお勧めしません。

なぜなら、

  1. 夏タイヤに戻すための「交換工賃」が余計にかかる(数千円)
  2. どうせ1ヶ月後には、またスタッドレスに交換するための「交換工賃」がもう一度かかる(数千円)
  3. (もし自分で交換するにしても)その重労働の手間と時間を考えると、あまりにも現実的ではない

下手をすれば、早割で浮いたどころか、トータルで2回分も余計な工賃(5,000円〜10,000円)を払うことになり、まさに「本末転倒」です。

ですから、もう交換してしまった事実は、「ちょっと早めの衣替えをしちゃったな」くらいに受け入れましょう。

大切なのは、「戻すこと」ではなく、これからの「運転の仕方」と「タイヤの管理」を変えることです。

 

Q2. 早期交換した場合、雪が降るまでの運転で気をつけることは?

ここが一番重要です。

雪が降るまでの暖かい期間、あなたは「非常にデリケートで、滑りやすく、燃費の悪いタイヤ」を履いている、ということを(ちょっと厳しい言い方ですが)自覚してください。

タイヤを長持ちさせ、何よりあなた自身の安全を確保するために、以下の「3つの“急”を避ける運転」と「1つの“確認”」を徹底してください。

1. 「急」ブレーキを避ける(最重要!)

特に雨の日は、あなたの車の制動距離(ブレーキが効き始めてから止まるまでの距離)は、夏タイヤの時より明らかに長くなっています。

「まだ大丈夫」が、もう大丈夫ではありません。

車間距離を、いつもの「1.5倍」は空ける意識で、早め早めの、優しいブレーキ操作を心がけてください。

2. 「急」ハンドルを避ける

あの「ふにゃふにゃ感」を常に意識してください。カーブの手前では、いつも以上にしっかりと速度を落とす。高速道路でのレーンチェンジも、ゆったりと、2〜3秒かけるくらいの気持ちでハンドルを切る。

タイヤに無理な横の力を加えないことが、摩耗を防ぎ、スリップを防ぐことにも繋がります。

3. 「急」加速を避ける

青信号での「グッ」と踏み込む発進は、柔らかいタイヤが一番摩耗する瞬間です。(まさにヤスリでゴムをこする行為です)

まるで、助手席に「倒れたら困るケーキの箱」でも置いているかのように、アクセルを「ふんわり」と踏み込む。これだけで、タイヤの減り方は全く変わってきます。

4. 【新常識】「タイヤの空気圧」を必ず確認する

これは非常に重要ですが、見落としがちなポイントです。

タイヤの空気圧は「温度」で変わります。

もしあなたが「寒い朝」に交換作業をしてもらい、その後の「暖かい日中」に走ると、タイヤ内部の空気が膨張して、空気圧が「高すぎる」状態になっている可能性があります。

空気圧が高すぎると、タイヤの「真ん中だけ」が路面に強く押し付けられ、そこだけが異常に摩耗する「センター摩耗」の原因になります。

逆に、もし空気圧が「低すぎる」と、タイヤの「両肩(ショルダー)部分」が潰れて摩耗する「両肩摩耗」の原因になります。

月に一度、ガソリンスタンドなどで、必ず適正な空気圧(運転席のドアを開けたところにシールが貼ってあります)になっているか、チェックしてもらってください。

 

Q3. 1ヶ月早く交換すると、寿命はどれくらい縮む?

 

これは、残念ながら「あなたの状況によります」としかお答えできない、非常に難しい質問です。

なぜなら、

  • あなたが住んでいる地域の「平均気温」(20℃の日が多いのか、10℃の日が多いのか)
  • 雪が降るまでの「走行距離」(毎日50km通勤する人と、週末に5kmしか乗らない人では大違いです)
  • あなたの「運転のクセ」(上記Q2の“急”な運転が多いかどうか)

これら全てが、摩耗の速度に複雑に関わってくるからです。

ただ、ひとつの目安として、このように考えてみてください。

「気温20℃を超えるような暖かい日の、乾いた路面での走行は、冬本番の雪道走行の、3倍〜5倍のスピードで摩耗が進む可能性がある」と。

もし可能であれば、本当に寒い日が来るまでは、「ちょっとそこまでの買い物」は自転車や徒歩にする、「週末の遠出」は電車にするなど、少しだけ車に乗る頻度を減らす工夫ができると、タイヤにとっては一番優しいですね。

 

結局いつが正解?損しないスタッドレス交換の「最適タイミング」

デメリットも、緊急時の対処法も分かりました。

では、最後に「結局、いつ交換するのが一番賢いのか?」という、最も知りたい結論をお話しします。

カレンダーの日付で「11月になったから」とか「12月1日」と覚えるのは、実は間違いです。その年の気候によって、正解は毎年変わるからです。

プロが目安にしている、シンプルで確実な「2つの黄金ルール」を覚えてください。

 

目安①:【気温で判断】最低気温が「7℃」を下回る日が続いたら

 

これが、最も科学的で、最も信頼できる「絶対のルール」です。

なぜ「7℃」なのでしょうか?

それは、夏タイヤに使われているゴムの「性質」に理由があります。

一般的な夏タイヤのゴムは、「気温7℃」を境に、その性能が低下し始め、カチカチに硬化し始めるのです。

専門的には「ガラス転移点」という難しい言葉が関係してくるのですが、簡単に言えば、「夏タイヤのゴムが、しなやかさを失い、冷えたプラスチックの板のようになってしまう」温度が7℃なのです。

硬くなった夏タイヤは、たとえ乾いた路面でさえグリップ力を失い始め、雨が降っていれば、その性能低下はさらに著しくなります。

一方で、スタッドレスタイヤは、まさにこの「7℃」あたりから、その真価である「低温下でも変わらない柔らかさ」と「しなやかさ」を発揮し始めます。

見るべきは、日中の最高気温ではありません。

あなたが「朝、家を出て車に乗る時間(出勤・通学)」や、「夜、仕事から帰る時間」の気温です。

天気予報の「週間予報」を見て、その最低気温がコンスタントに「7℃」を下回るようになってきたら、それは「夏タイヤの限界」のサイン。

スタッドレスタイヤが本領を発揮できる環境になった証拠であり、交換の予約を入れるべき、最高のタイミングです。

 

目安②:【時期で判断】「初雪予報」の1ヶ月前

もう一つの目安は「天気予報」と「カレンダー」を組み合わせた、現実的なルールです。

なぜ「1ヶ月前」なのでしょうか?

これには、3つの深い理由があります。

1. 突然の「ドカ雪」に慌てないため

「来週、平地でも雪マークが出た!」

……そのニュースが出た途端、タイヤショップやガソリンスタンドはどうなるでしょうか?

そう、電話は鳴り止まず、ピットは予約でパンクし、パニック状態になります。

私自身、昔「来週、雪マークが出た!」と慌てて近所のショップに電話したら、「ご予約ですか? 最短で2週間後ですね」と、笑顔で断られた苦い経験があります。

凍えるような冷たい雨の中を、性能が低下した夏タイヤでヒヤヒヤしながら2週間も運転する……。これほど精神衛生上、そして安全上、良くないことはありません。

「初雪が降りそう」からでは、もう遅いのです。

「例年の初雪日」の、さらに1ヶ月前くらいから、予約の準備を始めるのが、真の賢者です。

2. 混雑のピークを避け、丁寧な作業をしてもらえる

1ヶ月前であれば、まだ予約もスムーズに取れますし、お店も空いています。

ピットがパニック状態の時に「流れ作業」で交換されるよりも、空いている時期に、整備士さんに「空気圧、バッチリにしておきましたよ!」と、余裕を持って丁寧に作業してもらう方が、安心感も違いますよね。

3. タイヤの「慣らし運転(皮むき)」ができる(最重要)

実は、新品のスタッドレスタイヤは、買ってすぐに100%の性能を発揮できるわけではありません。

タイヤの表面には、製造工程で型から剥がすための「離型剤(りがたざい)」という油分のようなものが、薄く付着しています。

この「皮」が、最初はツルツルと滑る原因になるのです。

雪が降る前に、100km〜200kmほど(時速60km以下で)、乾いた(そして寒い)路面を走ることで、この皮が一枚むけて(=慣らし運転)、タイヤ本来の「ギュッ」と掴むグリップ力が目覚めます。

いきなり新品タイヤで雪道に突っ込むのは、実は非常に危険な行為なのです。

1ヶ月前に交換しておくのは、この「慣らし運転」を、最も安全な乾いた路面で、余裕を持って終えるためにも、非常に理にかなっているのです。

 

あなたの地域の交換時期目安(地域別)

 

とはいえ、「じゃあ具体的にいつ頃?」という声も聞こえてきそうですので、あくまで「例年の目安」として、主要都市の推奨タイミングをまとめてみました。

(※これは過去の平均です!必ず、その年の「最低気温7℃」のルールと、週間予報を最優先してくださいね)

地域 例年の初雪 推奨交換時期の目安 7℃ルールが適用され始める目安
札幌 10月下旬~11月上旬 10月中旬~下旬 10月中旬頃~
仙台 11月下旬 11月上旬~中旬 11月上旬頃~
長野 11月中旬 10月下旬~11月上旬 10月下旬頃~
新潟 11月下旬 11月上旬~中旬 11月上旬頃~
金沢 12月上旬 11月中旬~下旬 11月中旬頃~
東京 1月上旬 12月上旬~中旬 12月上旬頃~
名古屋 12月中旬 11月下旬~12月上旬 11月下旬頃~
大阪 12月下旬 12月上旬 12月上旬頃~

私が住んでいる北海道(札幌近郊)では、10月中旬にはもう最低気温が7℃を切り始めるので、10月下旬が交換のピークです。

一方、東京や大阪では、12月に入るまで夏タイヤで全く問題ないどころか、11月に交換するのは「早すぎる」というのが、この表からもよく分かりますね。

 

スタッドレスタイヤの交換時期が早すぎるデメリットのまとめ

  • スタッドレスの早すぎる交換は「摩耗」「スリップ危険」「燃費悪化」などデメリットだらけ
  • 「早割」の数千円より、タイヤ寿命が縮む「数万円」の損失の方が大きい可能性が高い
  • もし既に交換してしまったら、慌てず、雪が降るまで「急」のつく運転を絶対に避ける
  • 同時に「空気圧」のチェックも忘れずに行う
  • 交換のベストタイミングは「最低気温が7℃を下回る」日が続いた時
  • または「初雪予報の1ヶ月前」に予約し、混雑を避けて安全に「慣らし運転」を終える

 

スタッドレスタイヤは、高価な買い物であると同時に、あなたと、あなたの大切な人の命を守る、冬の最も重要なパートナーです。

そのパートナーの性能を100%引き出し、大切に、安全に長く使うためにも、「早割」という言葉の響きだけに惑わされず、あなたの地域の「気温」と「天気」に合わせた、最も賢明なタイミングで交換してあげてくださいね。

正しい知識で、安全で、経済的なウィンタードライブの準備を、進めていきましょう。

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