カメラ・写真

【50代からの写真構図】スマホで感動的に撮れる基本のコツ

「可愛いお孫さんの写真を、もっと生き生きと撮りたい」 「夫婦で楽しむ旅行で見た、あの感動的な景色を、美しく残したい」 「丹精込めて育てたお庭の花々を、素敵に記録したい」

そんな素敵な想いをもって、スマートフォンやカメラを手に取ったものの、後から写真を見返してみると、なんだかパッとしない…。「あの時の感動が、どうして写真に写らないんだろう」「やっぱり、私にはセンスがないのかな」と、少し寂しい気持ちになってはいませんか?

ご安心ください。そのお悩み、かつての私も全く同じように抱えていました。良い写真に必要なのは、決して高価なカメラや、生まれ持った特別なセンスではありません。実は、誰でも学べる「構図」という“ちょっとしたコツ”を知るだけで、あなたの写真は、あなた自身が驚くほど劇的に変わるのです。

私自身、写真を始めた頃は「センス」という目に見えない言葉の壁に、ずいぶんと悩まされました。撮っても撮っても凡庸な写真ばかりで、一時はカメラを棚の奥にしまいかけたことすらあります。ですが、ある時この「構図」の存在を知り、騙されたと思って試してみたところ、ファインダー越しの世界が色鮮やかに輝き始めたのです。

この記事では、難しい専門用語は一切使いません。50代から始める写真構図というテーマに合わせ、あなたが今お持ちのスマートフォンを使って、明日からすぐに実践できる構図のコツだけを、私の経験も交えながら、心を込めて、分かりやすく解説していきます。

この記事を読み終える頃には、あなたは写真への苦手意識から解放され、「撮りたい!」という初期衝動に満ちた、新しい楽しみの扉を開いているはずです。

 

この記事のポイント

・写真にセンスや高価なカメラは一切不要

・難しいカメラ設定より「構図」が100倍重要

・あなたの「撮りたい」という心が最高のスパイス

・覚える基本構図はたった3つからでOK

・スマホのカメラで劇的に写真が変わる

・老眼でも分かりやすいシンプルな考え方を紹介

まずはじめに。50代の写真に関する4つの「思い込み」を捨てましょう

新しいことを始めるとき、私たちは無意識のうちに、いくつかの「思い込み」を抱えてしまいがちです。特に、アートや創作に関わる分野では、「自分には才能がないから」という言葉で、そっと蓋をしてしまうことも少なくありません。

でも、そういった心のハードルは、あなたの素晴らしい可能性を邪魔してしまう、とてももったいないものです。 まずは、写真に対する少し堅苦しいイメージを、ここで一緒に、ふわりと解きほぐしていきましょう。

 

思い込み①:「センスがないと良い写真は撮れない」は嘘です

 

「あの人はセンスがいいから」「私にはそんな美的感覚はないし…」 これは、写真を始めようとする多くの方が口にする言葉であり、最大のつまずきの石です。何を隠そう、私自身もずっとそう思い込んでいました。

ですが、長年写真と向き合ってきて、今、断言できます。それは全くの誤解です。

もちろん、一部の天才的な写真家には、天性の感性があるのかもしれません。でも、私たちが目指す「見ていて心地よい写真」「素敵だなと感じる写真」のほとんどは、センスではなく、後から誰でも学べる「知識」で成り立っています。

それが、まさにこの記事のテーマである「構図」です。

構図とは、いわば「美味しい料理のレシピ」です。センスの良い料理人は、長年の経験で培った知識の引き出しから、食材に合った最高の調理法を瞬時に選び出しています。それは才能ではなく、知識と経験の集積なのです。写真も全く同じで、「こういう時には、この構図」という基本レシピを知ることで、誰でも安定して「美味しい写真」を作れるようになります。

センスは、その基本レシピをたくさん試していく中で、自然と磨かれていく「応用力」のようなもの。今は全く気にする必要はありません。まずは、基本のレシピを手に入れることから始めましょう。

 

思い込み②:「専門用語や難しい設定が必須」ではありません

 

カメラの本を開くと、「絞り」「F値」「ISO感度」「シャッタスピード」…まるで外国語の呪文のような言葉が並んでいて、それだけでアレルギー反応が出てしまいますよね。

ここで、あなたに朗報です。それらの言葉は、今日、この場で、一旦すべて忘れてしまって大丈夫です。

なぜなら、今のスマートフォンに搭載されているカメラは、驚くほど優秀な、小さなコンピューターだからです。それらの難しい計算や設定は、すべてスマホが「今のこの場面では、この設定がベストですね」と判断し、一瞬で自動調整してくれます。それはまるで、あなたの隣に、経験豊富なオーケストラの指揮者がいて、各楽器(設定)に完璧な指示を出してくれているようなものです。

ですから、あなたは難しい設定に頭を悩ませる必要は一切ありません。あなたはただ、ステージ上の「誰を(何を)主役にするか」ということだけに集中すれば良いのです。つまり、「どこに、何を置くか」という構図だけに集中すれば、スマホという名の指揮者が、最高の演奏(写真)を記録してくれます。

 

思い込み③:「スマホではなく一眼レフが必要」は過去の話

「やっぱり、本格的な写真を撮るなら、大きくて立派なカメラじゃないとダメなんでしょう?」

これも、非常によくあるご質問です。答えは、きっぱり「NO」です。 写真家の間で語られる「最高のカメラとは、今あなたが手にしているカメラだ」という言葉があります。どんなに高性能なカメラでも、家に置いたままでは一枚の写真も生み出してはくれません。

その点において、いつもあなたのポケットやバッグに入っているスマートフォンは、最強のカメラと言えるでしょう。お孫さんのふとした笑顔、散歩道で見つけた可憐な花、旅先で出会った夕焼け。そんな「撮りたい!」という心の動きに、瞬時に応えてくれる最高の相棒です。

また、スマホの軽さは、撮影時のフットワークの軽さに直結します。被写体にも威圧感を与えないので、自然な表情を引き出しやすいという大きなメリットもあります。この記事でご紹介する作例も、すべてスマートフォンで撮影したものです。スマホで十分すぎるほど、素敵な写真は撮れます。その手軽さこそが、写真を長く楽しむための、一番の秘訣なのです。

 

思い込み④:「老眼だと構図を考えるのが大変」も心配無用

 

「最近、手元が見えづらくて…」「スマホ画面の細かい線なんて、見ていられないわ」 お気持ち、とてもよく分かります。年齢を重ねれば、身体に変化があるのは当然のことですよね。視力の変化は、時に新しいことへの挑戦を億劫にさせます。

でも、ご安心ください。構図は、決してミクロの単位で考えるものではありません。写真は、細部の集合体ではなく、全体のバランスが命です。 例えば、美術館で一枚の絵画を鑑賞するときを想像してみてください。私たちは、筆のタッチや絵の具の細かなひび割れを最初に見るでしょうか?いいえ、まずは絵全体の構成や色使い、何が描かれているかという、大きなバランスから美しさを感じ取るはずです。

写真もそれと同じです。画面に表示される9分割の補助線(グリッド線)は、あくまで目安。「画面を、だいたい縦と横に3つに分けた、そのあたり」というような、もっと大まかでシンプルな捉え方で全く問題ありません。細かい部分が見えなくても、全体の大きな構成の美しさは、必ず写真に写ります。

 

構図を学ぶ前に。たった一つ、知っておきたい心構え

さて、いよいよ構図の具体的なテクニック…と進む前に、もう一つだけ、とても大切なことをお伝えさせてください。これは、あらゆるテクニックの土台となる、写真の「心」の部分です。

 

あなたの「撮りたい!」という心が、最高のスパイスになる

 

構図とは、先ほど「料理のレシピ」に例えました。ですが、どんなに素晴らしいレシピも、主役である「食材」がなければ意味がありません。写真における食材とは、目の前にある被写体であり、そして何より、それを見て「素敵だな」「撮りたいな」と感じた、あなたの心そのものです。

テクニックにばかり気を取られると、つい「構図のために被写体を探す」という本末転倒な状態に陥りがちです。そうではなく、まず、あなたの心が動く瞬間を大切にしてください。

「ああ、このお花、光を浴びてキラキラしているな」 「お孫さんの、この真剣な横顔が、たまらなく愛おしいな」 「この風景の、どこまでも続くような道が、なんだかいいなあ」

この、心が「キュン」となる感覚。それこそが、写真の出発点であり、最高のスパイスなのです。 写真を撮る前に、一呼吸おいて、「私は、今、目の前の何に感動しているんだろう?」と自分に問いかけてみてください。その「主題」がはっきりすれば、不思議なことに、どの構図(レシピ)を使えば、その感動が一番伝わるかが、自然と見えてくるようになります。

構図は、あなたの感動を、見る人に伝えるための「翻訳機」のようなもの。まずは、翻訳したい「原文(あなたの感動)」を、しっかりと味わうことから始めましょう。

 

何から始める?写真が劇的に変わる「3つの黄金構図」

さて、心の準備が整ったところで、いよいよ構図の具体的なお話に入っていきましょう。世の中には何十種類もの構図が存在しますが、すべてを一度に覚えようとすると、かえって混乱してしまいます。

そこで今回は、数ある構図の中から「これさえ覚えておけば、大抵のものは素敵に撮れる」という、いわば“黄金レシピ”とも言える3つの基本構図を厳選しました。

私自身、今でも写真を撮るときに、無意識のうちにこの3つのどれかに当てはめていることがほとんどです。それくらい、万能で、奥が深い構図たちです。まずは、この3つをあなたの「引き出し」にしまってみてください。

 

まずはこれだけ!安定感を生む「三分割法」

 

最初にご紹介するのは、構図の王様とも言える「三分割法(さんぶんかつほう)」です。もし、今日一つだけ覚えて帰るとしたら、この構図を一番におすすめします。

やり方は、とても簡単です。 画面を、縦と横にそれぞれ三分割する線をイメージしてください。(スマホのグリッド線機能を使えば、実際に線が表示されます)

そして、その線が交わる4つの点のどこかに、写真の主役(一番見せたいもの)を置くのです。

たったこれだけです。 なぜ、これだけで写真が良く見えるのでしょうか。それは、この構図が、古くから絵画などで用いられてきた、人間が最も美しいと感じるバランスの一つだからです。ど真ん中に置くよりも、少しずらした方が、写真に心地よいリズムと「間(ま)」が生まれ、見る人に安定感と落ち着きを与えます。

初心者がやりがちな失敗は、この交点に主役をきっちりと合わせようとしすぎて、写真全体が窮屈になってしまうことです。交点はあくまで目安。「だいたい、この辺りかな」という、ゆったりした気持ちで主役を配置するのが、自然に見せるコツですよ。

 

脱マンネリ!主役が際立つ「日の丸構図」の応用編

「撮りたいものは、ついつい真ん中に置いちゃうのよね」 そう、これが「日の丸構図」です。初心者の方が、まず最初に撮る構図ですね。そして、多くの教本では「日の丸構図は避けましょう」と書かれていることが多いのですが、私はそうは思いません。

日の丸構図は、伝えたいテーマが明確で、見る人の視線を主役にぐっと引きつける力のある、非常にパワフルな「攻めの構図」です。

ただし、その力を最大限に引き出すためには、一つだけ重要なルールがあります。それは、「背景をできる限りシンプルにする(主役以外の情報を徹底的に削ぎ落とす)」ことです。

初心者がやりがちな失敗は、主役を真ん中に置いたは良いものの、背景にテレビや雑誌、他の人物などがごちゃごちゃと写り込んでしまい、主役が完全に埋もれてしまうことです。これでは、まるで満員電車の中にいる主役のようで、誰も注目してくれません。

そうではなく、あなたが少し動いて、背景が「青空だけ」「無地の壁だけ」「緑の芝生だけ」になるような角度を探してみてください。あるいは、被写体にぐっと近づいて、背景をぼかしてしまうのも素晴らしい方法です。 そうやって背景を整理してあげると、ど真ん中に置かれた主役は、まるで静寂な舞台の上のスポットライトを浴びた俳優のように、堂々と、圧倒的な存在感を放ち始めます。

 

奥行きと流れを作る「対角線構図」

 

最後にご紹介するのは、静的な写真に「動き」や「奥行き」を与えてくれる、魔法のような構図、「対角線構図」です。

これは、画面の対角線(四隅を結ぶ斜めの線)を意識して、道や川、海岸線、建物の輪郭などを配置する方法です。

私たちの目は、水平や垂直の線には「安定」や「静けさ」を感じますが、斜めの線には「動き」や「リズム」「時間の流れ」を感じるようにできています。

初心者がやりがちな失敗は、斜めの線を意識しすぎるあまり、写真全体が傾いてしまい、見る人に不安定な印象を与えてしまうことです。 コツは、メインの斜めの線とは別に、画面のどこかに「水平」または「垂直」の線を意識的に入れることです。例えば、斜めの道の脇に、まっすぐ立つ電信柱を入れる。それだけで、写真全体のバランスが取れ、斜めの線のダイナミックさがより際立ちます。

旅行先の街並みや、テーブルに並んだ食器など、日常の中にある「斜めの線」を探すだけで、見慣れた風景が、まるで映画のワンシーンのようにドラマチックに写りますよ。

 

【シーン別】撮りたいものがもっと素敵になる!構図の実踐テクニック

さて、3つの黄金構図を覚えたら、次はいよいよ実践編です。 あなたが撮りたいと思っている、あの素敵な被写体たち。基本構図をどう応用すれば、もっと魅力的に撮れるのでしょうか。具体的なシーンを思い浮かべながら、その撮影の「物語」を一緒に紡いでいきましょう。

 

(孫)動き回る孫の一瞬を捉える構図のコツ

 

元気いっぱいのお孫さんの撮影は、何よりの楽しみですが、一番の難敵でもありますよね。予測不能な動き、一瞬で変わる表情。でも、いくつかのコツを知れば、失敗はぐっと減り、宝物のような一枚が撮れるようになります。

  • コミュニケーションが9割: まず、構図を考える前に、あなた自身が一緒に遊んでしまうのが一番の秘訣です。カメラを構えて「はい、笑って!」と指示するのではなく、同じ目線で遊び、笑い合う時間の中で、ふとした瞬間にスマホを向ける。その方が、ずっと自然で、心からの笑顔が撮れます。「カメラマン」になるのではなく、「一緒に遊ぶおじいちゃん・おばあちゃん」でいることを心がけてみてください。
  • 物語が生まれる「あそびの空間」: お孫さんが走っている時や、何かをじっと見つめている時。三分割法を応用して、その目線の先や、動いていく方向を、画面の中に広く空けてみましょう。この何もない空間は「あそび」と呼ばれ、見る人に「この先には何があるのかな?」「何を見ているのかな?」と想像させます。写真に物語の余白が生まれ、ただの記録ではない、「作品」へと昇華させてくれるのです。
  • ヒーロー・ヒロインにする「低い目線」: 私たちは、つい立ったまま、上から子供を撮りがちです。それは「大人の視点」からの記録写真。一度ぐっと腰を落として、時には地面に膝をついてでも、お孫さんと同じ目の高さでカメラを構えてみてください。世界は一変します。背景の余計なものが消え、空が大きく入ることで、お孫さんがまるで物語の主人公のように輝き始めます。
  • 最高の表情を逃さない「連写」という名の網: 「構図を考えているうちに、最高の笑顔が消えちゃった…」なんて、もったいないですよね。今のスマホは、シャッターボタンを長押しするだけで、カシャシャシャ!と連続で撮影できる「連写(バースト)機能」がついています。大体の構図を決めたら、あとは連写で撮り続けて、後から一番良い表情の一枚を選ぶ。この方法なら、決定的瞬間を逃しません。

 

(旅行・風景)感動を見たままに写す風景構図のコツ

夫婦で楽しむ旅行、気の置けない友人との旅。その場で感じた、息をのむような美しい風景。その感動を、そのまま写真に閉じ込めたいですよね。風景写真こそ、構図の力が最も発揮されるジャンルです。

  • 空と大地の比率で語る物語: 海や広い草原を撮るとき、地平線や水平線を画面のど真ん中に置くと、写真が二つに分断されたような、単調な印象になりがちです。ここで三分割法を使い、地平線を上か下の線に合わせてみましょう。面白い形の雲が浮かぶ青空が主役なら、空を画面の3分の2を占めるように。どこまでも続く花畑や、美しい砂浜の広がりが主役なら、大地や海を3分の2に。どちらを主役にするかで、写真の物語は大きく変わります。
  • 時間という名の魔法「朝と夕方」: 風景写真は、「光」で決まると言っても過言ではありません。特に、日の出後と日没前の、太陽の光が低い角度から差し込む時間帯は「マジックアワー」と呼ばれ、全てのものをドラマチックに照らします。影が長く伸び、風景に立体感が生まれ、空は金色や紅色に染まる。もし可能なら、少しだけ早起きしたり、日没まで待ってみたりしてください。いつもの風景が、特別な表情を見せてくれるはずです。
  • 一枚の絵画にする「前景」テクニック: 雄大な景色を前にすると、つい全体を撮りたくなりますが、それだけだと、のっぺりとした絵葉書のような写真になりがちです。そこで、手前に咲いている一輪の花や、印象的な形の岩、色づいた木の枝などを、意識的に画面に入れてみてください。これを「前景」と呼びます。手前のもの(前景)、中間の景色(中景)、遠くの景色(遠景)という3つの層ができることで、写真に驚くほどの立体感と奥行きが生まれるのです。まるで、額縁の中から風景を覗いているような効果も生まれ、一枚の絵画のような深みが出ます。

 

(花・料理)趣味の時間を美しく切り取る構図のコツ

 

丹精込めて育てたお花、腕によりをかけて作ったお料理。そんな、あなたの愛情がこもった作品たちも、構図の力で、もっと素敵に残すことができます。

  • 主役を一人だけ選ぶ「引き算の美学」: たくさんの花が咲き乱れる花壇や、品数豊富に並んだ食卓は、とても華やかですが、写真にすると意外と散漫な印象になりがちです。まずは、勇気を持って「今日の主役は、この一輪」「この一皿」と、主役をはっきりと決める「引き算」をしてみましょう。主役が決まれば、他のものは思い切ってフレームの外に出すか、背景としてぼかしてしまう。それだけで、主役が凛として際立ち、写真全体の質がぐっと上がります。
  • 光を読んで、質感を写し撮る: 花びらの柔らかな質感や、料理のシズル感(美味しそうな湯気やツヤ)を表現するには、「光」を読むことが不可欠です。真上からの照明や、正面からのフラッシュは、被写体の陰影を消してしまうので避けましょう。一番のおすすめは、窓際などで、横から柔らかく光が当たる場所(サイド光)です。横からの光は、被写体の表面に美しい陰影を作り出し、立体感や質感を豊かに表現してくれます。レースのカーテン越しの光などは、最高の照明装置ですよ。
  • 物語を添える「スタイリング」の初歩: 少しだけステップアップしたお話ですが、主役の周りを少しだけ演出(スタイリング)してあげると、写真に物語が生まれます。例えば、コーヒーカップの隣に、読みかけの本や眼鏡をそっと置いてみる。焼き菓子の横に、アンティークのフォークを添えてみる。お花の横に、お気に入りのジョウロを置いてみる。そんな風に、主役に関連する小物を少し加えるだけで、その写真を見る人は、背景にあるあなたの豊かな時間を想像してくれるでしょう。

 

明日からできる!楽しみながら構図が身につく簡単練習法

さて、たくさんのコツをお伝えしてきましたが、一番の上達の近道は、やはり「楽しみながら、たくさん撮ってみること」です。 スポーツや楽器の練習と同じで、頭で理解したことを、体が自然にできるようになるまで、少しだけ反復練習が必要です。でも、それは決して苦しいトレーニングではありません。日常がキラキラと輝きだす、楽しい宝探しのような時間です。

 

ステップ1:まずはお手持ちのスマホの「グリッド線」を表示しよう

 

構図を意識するための、最初の、そして最強のパートナーが「グリッド線」です。これは、車の運転でいうところの、教習所のコースの白線のようなもの。慣れるまでは、この線を頼りに走れば、大きくコースを外れることはありません。

  • iPhoneの場合: 「設定」アプリ → 「カメラ」 → 「グリッド」をオンにする
  • Androidの場合: カメラアプリを開く → 「設定(歯車のマークなど)」 → 「グリッド線」や「補助線」といった項目をオンにする (機種によって多少異なります)

まずは、この魔法の線を表示させて、あなたの見る世界を9分割することから始めてみましょう。

 

ステップ2:いつもの散歩で「構図探しウォーク」に出かけよう

私が写真を始めた頃、毎日やっていた練習法です。いつもの散歩道を歩きながら、カメラを持たず、ただ目で「今日の主役は、あの赤いポストにしよう」「あの猫を主役にして、背景の塀を脇役にしよう」と、頭の中で構図を組み立てるのです。

さらに楽しくするために、「今日のテーマ」を決めるのもおすすめです。「今日は三分割法だけを探してみよう」「今日は斜めの線(対角線構図)を探す日」というように、テーマを持って歩くと、今まで見過ごしていた風景が、次々と目に飛び込んでくるようになります。

これを続けると、日常の風景が、たくさんの「被写体の宝庫」に見えてきます。写真を撮る前の、「ものを見る目」を養う、とても良いトレーニングになりますよ。

 

ステップ3:同じものを3つの構図で撮り比べてみる

 

練習の総仕上げです。あなたの目の前にある、コーヒーカップでも、庭の植木鉢でも、何でも構いません。 それを、今日学んだ「①三分割法」「②日の丸構図」「③対角線構図」の3パターンで、それぞれ撮り比べてみてください。

そして、撮った写真を見比べて、「ああ、この構図だと、こんな風に見えるのか」「こっちの方が、落ち着いて見えるな」「これはなんだかドラマチックだな」と感じてみてください。この「自分の目で見て、感じる」という体験こそが、どんな教科書よりも雄弁に、あなたに構図の面白さを教えてくれるはずです。 さらに、撮った写真を家族や友人に見せて、「どれが一番好き?」と聞いてみるのも良いでしょう。自分では気づかなかった視点を発見できるかもしれません。

 

ステップ4:小さな「マイベスト集」を作ってみよう

 

撮った写真は、撮りっぱなしにせず、ぜひ見返してみてください。そして、その中から「これは、なんだか上手く撮れたな」と思えるお気に入りの写真を数枚選び、スマートフォンのアルバム機能で「ベストショット集」という名前の新しいアルバムを作ってみましょう。

そこに、あなたの自信作が少しずつ溜まっていくのを見るのは、とても嬉しいものです。自分の成長が目に見える形で分かり、次の撮影へのモチベーションに繋がります。この小さな成功体験の積み重ねが、何よりも大切なのです。LINEのグループ機能を使って、ご夫婦やご家族だけの「写真アルバム」を作るのも、素敵なコミュニケーションになりますよ。

 

まとめ

この記事では、50代から始める写真構図というテーマで、多くの方が抱える不安を解消し、スマホ一つで実践できる3つの基本構図と、シーン別の撮影テクニックを、私の経験も交えながら、詳しく解説しました。

最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

・写真はセンスではなく、誰でも学べる「知識」であり「レシピ」

・あなたの「素敵だな」と感じる心が、写真の一番の主役

・難しい設定はスマホに任せ、「三分割法」「日の丸構図」「対角線構図」に集中

・孫、旅行、趣味など、撮りたいシーンで構図を活かせば、物語が生まれる

・大切なのは高価な機材より、日常の中の宝物を探す「楽しむ心」

写真は、過去の美しい瞬間を記録してくれるだけでなく、未来の日常を、もっと輝かせてくれる魔法の道具です。構図という杖を手にすれば、今まで見過ごしていた何気ない風景が、愛おしい被写体へと変わっていく。その発見の連続が、あなたの人生の後半を、より豊かで、彩り深いものにしてくれるはずです。

さあ、まずはスマホを手に取って、あなたの身の回りにある「素敵」を探しに出かけてみませんか? きっと、あなたの写真ライフが、これまで以上に豊かで、輝きに満ちたものになることを、心から願っています。

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